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序文
北アルプスとともに
人はなぜ、木に触りたいのだろう?
小さな木片を握ると、安心するのはなぜだろう?
山や川に、木や石に、まだ名前がなかったころから、山はすでにそこにあり、人は森とともに生きていました。
いま北アルプスと呼ばれる山脈のあちらとこちら、こちらとあちら。
飛騨と信州の人々は、険しくも雄大な山のめぐみにあずかりながら、暮らしてきました。
豊富な水に育まれ、山にはさまざまな木々が育ちました。
分水嶺を境にして、日本海側にはナラやブナなどの落葉樹、太平洋側には杉、檜などの常緑樹。そして、信州には黒曜石、飛騨には下呂石といった、木を加工する道具をつくるのにうってつけの岩石がありました。山に暮らす人々は、道具を使い、木を伐り、木を削り、住む場所をつくり、器や生活の道具をつくりました。
長い年月をかけ、やがて人々は峠を越えて行き来するようになります。
安房峠を越え、野麦峠を越えて——。
たくさんの人が踏みしめた道の先に、もたらされたものはなんだったのでしょうか?
近代以降、飛騨の地で、それまで見たことも使ったこともない、西洋の曲木の椅子がつくられるようになったことは、偶然の出来事ではなかったはずです。そして、いま信州松本を中心に、優れた木工家たちが集まっていることも。
峠の大樹は、いつの時代も未来へつながる道標です。
歩き疲れたとき、懐かしい人を思うとき、立ち止まって森の梢を仰ぎ見るひとときは、人間の尺度では計り知れない悠久の時間のなかに、われわれもまた生きていることを思い出させてくれます。
飛騨と信州、いまそれぞれの土地で木工をなりわいとして生きる人たちの営みを通して、先人に思いを馳せ、もう一度、わたしたちの手のなかに、木に触れる喜びを取り戻すことができたらと思っています。
展示概要
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2024年10月19日(土)—11月17日(日) 水曜定休
※10月19日(土)は出展作家の4名が在廊します。 -
10時-18時
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遊朴館 HIDA GALLERY 2Fギャラリー(〒506-0844 岐阜県高山市上一之町26)
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無料
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飛騨産業株式会社
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三谷龍二 前田大作 大久保公太郎 貝山伊文紀
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中村好文 小泉誠
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陳瑞憲
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環境省中部山岳国立公園管理事務所
作家・展示作品紹介
- 三谷龍二
- 前田大作
- 大久保公太郎
- 貝山伊文紀
三谷龍二
1952年福井県生まれ。1981年長野県松本市に PERSONASTUDIOを開設。1985年から始まった「クラフトフェアまつもと」に最初期から関わる。木の匙、木の器といった生活に根ざした現代の工芸を先駆けた。2011年松本市内の古いタバコ屋を改装した「10cm」を開店。生活工芸について書いた新刊「手の応答」(新潮社青花の会)が11月刊行予定。
前田大作
1975 年鎌倉生まれ。江戸指物の前田木藝工房四代目。10歳で松本へ。大学卒業後、大手オフィス家具メーカーに勤務後、父の元で徒弟制度そのままの修業時代を送る。2007年アトリエ・エムフォオを立ち上げ、信州唐松の家具の制作に取り組む。若い世代が木工を続けたいと思える職場環境の整備にも力を入れる。
大久保公太郎
1979 年長野県松本市生まれ。富山大学卒業。京都での木工修業を経て、上松技術専門学校入学。2012年大久保ハウス木工舎を開設。松本市内と北アルプスが一望できる高台の工房で、ひたすらヘラと匙を削り続ける日々。砥石や鉋など道具の改良や研究にも余念がない。2024年高山で開催の「さじフェス」南京鉋講座(予定)。
貝山伊文紀
1979年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院デザイン専攻機能設計研究室修了。飛騨産業勤務、東京藝大教育研究助手を経て、2013年アトリエ灯設立。国産広葉樹の枝を使った作品の制作を本格的に開始。2017年長野県安曇野市に転居。同年、「枝の匙」が日本デザインコミッティーによるデザインコレクション選定品となる。
杉でつくる、杉がつくる
飛騨産業×4人の作家たち
飛驒産業では2003年から、杉を使って家具をつくる取り組みを始めました。
本来、杉や檜の針葉樹は、強度的に家具材には不向きとされ、椅子やテーブルといった家具の多くは、ホワイトオークやビーチ、ウォルナットなどの広葉樹でつくります。
しかしいま、日本中の山林には、戦後の住宅不足を解消するために、建材として使う目的で植えられた杉や檜が、伐りどきを過ぎた状態で放置されています。1969年代半ばから木材の輸入が自由化され、値段の安い外国産材が入ってきたために、使われなくなったからです。人の手が入らなくなった人工林は荒れるばかりです。飛騨にもそんな山林がたくさんあります。そこで、杉をなんとか活用できないかと研究を重ね、考案したのが「杉圧縮材」です。杉の板を高温で蒸して柔らかくし、プレス機で圧縮し、家具に使えるように強度を高めた新材料です。これまでさまざまな製品を送り出してきました。
今回、4人の作家のみなさんに、圧縮率35%と50%の2種類の杉圧縮材をお届して、作品づくりに挑戦していただきました。全員が50%材を選択しています。家具とはまた違う、新しい杉の表情に出会うことができます。
三谷龍二
木目は、季節によって成長スピードが違うことから生まれる。杉はその差が大きく、やわらかな早材と、硬い晩材部分とが、はっきりとした木目となってあらわれる。杉を器として使用した場合には、傷きやすいという弱点を持つが、早材部分を圧縮した杉は、それを補ってくれる。以前、興味をもち、杉圧縮材を分けていただいたことがある。そのときには、板目の強さが気になって形にできなかった。リベンジとなる今回は、白漆を塗って木目の強い印象を和らげることを試みた。塗膜の奥からうっすら浮き出てくる木目が、少し波打って、広葉樹とは違う杉材のやわらかな表情を少しは残すことができた。
前田大作
杉の小口を削れたら一人前といわれるほど、杉は刃物で仕上げるのが難しい。扱いの難易度は高いが、ほかの材料にはない最大の特徴はなんといっても軽さだ。普段から針葉樹の軽さを活かした椅子の制作をしているが、杉圧縮材に置き換えた場合、果たしてどのようになるだろうか。椅子にとって軽さは正義だと考えている。椅子の軽さには意味がある。
大久保公太郎
普段使っている広葉樹とももちろん違う、杉圧縮材は神代みたいな炭化した印象があった。硬さと同時にもろさもあり、圧縮しているとはいえ、杉独特の刃物で仕上げる難易度はちゃんと残っていて、なかなか手強い。テンプレートの型紙で墨付けしてから削った。ヘラを製品として規格化するならば、塗装塗膜で養生する前提になるだろう。今回、あくまで試験的に製作してみた感想である。
貝山伊文紀
とても可能性のある材料だと思う。無塗装の杉圧縮材の箸を3年ほど使っており、普通に洗剤で洗っているが、毛羽立ちが起こらないのがすごい。耐水性の高さを活かしたいと思った。圧縮のかかっている部位であれば摩耗に強く、反りも少ないようだ。これだけ真っすぐな状態がキープできるのであれば、フォークに向くのではないかと考えた。突き刺して使うほどの強度は出せないので、巻きつけるパスタ限定。フォークの形状に沿う木目を探してみると、枝分かれする湾曲した節に近い場所から木取りすることになる。
トークセッション
会期初日には本展の開催と遊朴館 HIDA GALLERYの
リニューアル記念してトークセッションを行います。
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2024年10月19日(土)(16:00~18:10)
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飛騨高山まちの博物館(岐阜県高山市上一之町75)
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100名(参加無料・要予約)
『飛騨と信州、山の向こうに呼び合うものは』
木工の街として知られる飛騨と松本、今回の交流で見えてきたものは?
木とともに暮らす喜び、木でものをつくる喜びについて語ります。
-登壇者-
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三谷 龍二 木工作家
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岡田 明子 飛騨産業株式会社 代表取締役社長
ファシリテーター:佐野 由佳(編集兼ライター)
『遊朴館 HIDA GALLERYの空間デザイン』
新しく生まれ変わった遊朴館 HIDA GALLERY。
改修にたずさわった建築家・デザイナーが集い、高山の街と場がもつ可能性について考えます。
-登壇者-
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中村 好文 建築家
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小泉 誠 家具デザイナー
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岡田 贊三 飛騨産業株式会社 代表取締役会長
ファシリテーター:佐野 由佳(編集兼ライター)
実演・ワークショップ
今回の展示に合わせて、信州や飛騨で活躍する工芸作家・職人達による木工の実演や自分自身で手を動かして作品作りに挑戦できるワークショップを開催します。
※ワークショップをご希望の際は下記詳細より、必ずお申し込みをお願いいたします。(予約優先制)
実演
匙(さじ)製作
大久保公太郎(木工作家)削り馬を用いて匙(さじ)製作をしている様子を見ることがでます。削り馬とは、馬のようにまたがって足でペダルを踏み、木材を固定するものです。両手が空くため、南京鉋など両手を使う刃物を使って木材を削ることができます。
箸製作
浦谷大司(家具職人)鉋を使って箸を製作します。鉋とは木工用の工具の一種で、主に材木の表面を削る加工に使われます。同日に箸づくりのワークショップも行っています。
組子細工製作
川上真吾(飛騨産業社員)組子細工の作品を製作します。組子細工とは釘を使わずに木を幾何学的な文様に組み付ける木工技術です。
木の小鳥製作
松尾吉一(木工芸作家)木工芸作家である松尾氏による、「木の小鳥」の製作の様子を見ることができるます。同氏の作品は樹木本来の木肌や木目が生かされており、温かみのある作風が特徴的です。
鉋がけ
玉田義卓(飛騨職人学舎 学舎長)鉋がけの様子を見ることができます。鉋とは木工用の工具の一種で、主に材木の表面を平滑にするために使われるますが、材木に溝を作るなど特殊な目的用の鉋も存在します。
ワークショップ
森のかけらのスプーンづくり
貝山伊文紀(木工作家)鉋がけ体験箸づくり
浦谷大司(家具職人)組子細工コースターづくり
川上真吾(飛騨産業社員)曲げわっぱ小判弁当箱づくり
西田恵一(春慶塗木地師)カスタム玄能ワークショップ
玉田義卓(飛騨職人学舎 学舎長)玄能は、日本発祥の金槌の一種で、木工の世界では鑿(のみ)を叩く道具として主に使用されます。このワークショップでは柄を角材からお好みの形状に削り、オリジナルの玄能を製作できます。藤六作玄能80匁・100匁を使用します。
木の小鳥づくり
松尾吉一(木工芸作家)
特別販売
企画展に合わせて制作した冊子と展示作品を抽選販売します。
「山の向こうに呼び合うものは 松本の木工と飛騨の杉展」冊子
企画展の内容をまとめた冊子をオンライン販売します。飛騨と松本の交流をテーマに、それぞれ木と生きるフィールドを独自に開拓してきた4名の作家、三谷龍二・前田大作・大久保公太郎・貝山伊文紀の「人と作品」を紹介しています。2つの地域の新しい交流が、木とともにあるこれからの暮らしについて、木を使ってものをつくる喜びについて、考えるきっかけになることを願っています。
定価:2,750円(税込)
仕様:W200×H190mm、並製本、72ページ
三谷龍二・大久保公太郎・貝山伊文紀の作品を抽選販売
会期中、企画展で展示される作品を抽選販売します。会場に展示する作品の中からご希望の作品を選んでお申し込みください。抽選は会期終了後に行いますので、会期中はゆっくりと作品をご覧いただけます。当選は先着順ではありませんので、受付期間内にお申し込みください。前田大作氏の作品については、ご希望のお客様に注文販売させていただきます。
□申し込み方法
受付期間:10月19日(土)〜11月17日(日)会期中
申込受付:遊朴館 HIDA GALLERY 店頭のみ
□抽選の結果発表について
当選された方のみ、メールでご連絡します。
□注意事項
転売目的でのご購入は固くお断りいたします。
当選後のキャンセルは固くお断りいたします。
電話やメールでのお申し込みはお断りいたします。
発送先は国内のみとさせていただきます。
※その他詳細につきましては、店頭スタッフにお尋ねください。
施設情報
遊朴館 HIDA GALLERY
【所在地】
〒506-0844 岐阜県高山市上一之町26
【営業時間】
10:00-18:00 水曜定休
【お問い合わせ】
0577-32-8892
yuhokan@shop.hidasangyo.com
アクセス
【高山駅から】
● 徒歩 約14分
● タクシー 約6分
【HIDA 高山店から】
● 徒歩 約16分
● バス+徒歩 約10分
天満神社前乗→まちの博物館前下車
● タクシー 約6分
駐車場有り