飛騨高山の「山々」。一般的には、この緑深い風景を俯瞰してそう呼ぶかもしれないが、この地を拠点に活動する飛騨産業はもう少し焦点を絞って「森」と呼び、「森と歩む」と謳う。
森とは文字通り、木の集まりである。山の頂きに目を凝らせば、枝葉を広げた広葉樹が一本、風を受けてそよいでいる。その隣も、そのまた隣にも。個性の異なる木が集まって森は成り立っているのだ。飛騨産業は木の家具を作る会社として、一本の木と共に、そしてその木々が育つ森と共に歩んでいきたいと考えている。
専務の本母雅博は、一枚の絵を示してこう説明する。「古くから日本人は森に入り、伐った木を熱源や建材として活用してきました。ところが化石燃料などに代わり、森は放置されてしまいました。人との接点がなくなり、手入れされなくなった森は土砂流出や環境劣化を引き起こします。私たちは木を扱う会社として、もっと森林資源を有効に活用し、人々の生活に役立てたいと考えています」。
森林資源の有効活用とは、一本の木を余すところなく使い切ること。森から木を伐り出して家具を作る。その過程で出た廃材をボイラーの燃料として使い、樹液を蒸留させて精油や農業資材にする。伐った分は、きちんと苗木を育てて、森に還す。
「森が健全な循環をたどることで、かつてのように、人と森が共に歩む世界観を取り戻す。それこそが、今の飛騨産業がさまざまな活動を通して取り組んでいることなのです」と、本母は力を込めて語る。