事業/取り組み

技を磨く

技術の研鑽と発展 圧縮

杉の圧縮

日本にしかない杉は学名を「クリプトメリア・ジャポニカ」といい、「隠された日本の財産」を意味します。
杉の植林が始まったのは室町時代とも伝えられており、寺社仏閣を建立する際の構造材としても周辺に植林を行い用材の確保を図ってきました。その木目は柾目が緻密によく通っており、日本人の美意識にも重なったのかもしれません。さらに「真っ直ぐ」なだけでなく、屋久杉や吉野杉の細かくて美しい杢はとても珍重されてきました。その他優れた調湿機能や香りなどを活かして、住宅・舟・桶など、現在に至るまで様々な場面で日本の暮らしと関わり続けています。

杉の圧縮

「とても軽い」「木目が真っ直ぐで美しい」「温かみのある質感」「日本国内で安定供給可能」杉にはこのような特長がありますが、柔らかい点は強度が必要な家具にとしては短所でした。私たちはこの柔らかいというデメリットを、加熱圧縮によって克服する技術を開発しました。その基本は100年に渡る「曲木」技術のノウハウにあります。高含水率・高温状態(蒸煮)で木材組織を軟化させ造形する曲木技術を基に、杉などの軟らかい木材の強度・加工性能・意匠性の向上を目指した圧縮の技術開発に取り組んできました。

圧縮工程

原木選別
伐採期になり山から切り出された原木の中から、用途にふさわしい木を選び、製品の寸法に合わせて製材します。

  • 圧縮工程
  • 圧縮工程

乾燥
圧縮用に製材後、天然乾燥・人工乾燥を経て、加工に合った含水率に調整します。

  • 乾燥
  • 乾燥

加熱圧縮・成型
木材を一定の温度で蒸して軟らかくしたのち、加熱しながらプレス機で圧縮します。圧縮しながら曲げや成型を同時に行うことができます。この後、家具やフローリングなどの製品へ加工します。圧縮により、細胞の隙間部分を押し縮めます。

  • 加熱圧縮・成型
  • 加熱圧縮・成型
加熱圧縮・成型
圧縮前 圧縮後
  • 圧縮前
  • 圧縮後
進化する圧縮技術

このプレス圧縮において使用する成型金型を活かせば、丸型・波型など平面に限らず目的の形状に圧縮成型することが可能となります。さらに圧縮成型の利点として、切削屑を生じないこと、緻密な木材表面が得られることなどもあります。また、現在圧縮材の品質向上はもとより、化粧圧縮や曲がる木材による三次元加工の研究もすすめています。

圧縮曲木
飛騨産業では平面圧縮だけではなく、圧縮と同時に曲げる技術を開発しました。曲面の加工により座り心地のよいチェアのデザインが可能となりました。

  • 接着・圧縮・曲げ加工
    接着・圧縮・曲げ加工
  • 形を整えた椅子背板
    形を整えた椅子背板
  • 圧縮曲げ木を用いたチェア
    圧縮曲げ木を用いたチェア

化粧圧縮
プレス成型金型に凹凸をつけることにより、木目に人工的な模様をほどこす加工を研究中です。デザインされた建材やカトラリーの開発を視野に入れています。

  • 化粧圧縮
  • 化粧圧縮を用いたティッシュボックス
    化粧圧縮を用いたティッシュボックス

杉圧縮柾目材
良質な丸太から製材された無節の杉材を丁寧に圧縮。圧縮後に湿度の影響で元に戻ってしまう難題に直面するも、薬剤などは一切使用せずに形状を変化させないよう徹底して研究を重ねました。その材料を短冊状に巾割りし、柾目が外に出るように板目同士を接着した杉圧縮柾目材。圧縮技術の進化系として“KISARAGI”に活かされています。

加熱圧縮・成型
  • 新技術を用いた杉圧縮柾目材
    新技術を用いた杉圧縮柾目材
  • 杉圧縮柾目材を用いたチェア
    杉圧縮柾目材を用いたチェア
  • 杉圧縮柾目材を用いたテーブル
    杉圧縮柾目材を用いたテーブル

曲がる木材
スライスされた圧縮杉はある程度自由に曲がり、三次元加工が可能です。成形合板では出せない無垢の風合いを活かした全く新しい素材として研究開発を進めています。

  • 曲がる木材
  • 曲がる杉を用いたディフューザー
    曲がる杉を用いたディフューザー
  • 曲がる杉を用いてデザインされたトレイ
    曲がる杉を用いてデザインされたトレイ