事業/取り組み

森と歩む

木の新たな価値の研究

きつつき森の研究所

飛騨産業では、2001年より国産材のスギを家具用材として活用する研究を行ってきました。工場内の既存設備を利用しながら、圧縮加工の研究をすすめ、2004年に森林組合や製材業者と「飛騨杉研究開発協同組合」を立ち上げました。さらに、大切な資源である木材を扱う家具メーカーとして、1本の木を無駄なく全て使いたいという思いから、2013年春には岐阜大学を退官された棚橋教授をお招きし、共に国産材活用の研究開発を進めるため、「きつつき森の研究所」を設立しました。棚橋教授は針葉樹の加熱圧縮技術の研究開発だけでなく、竹や木材などの森林資源を有効活用するあらゆる研究を行っていました。その代表的な取り組みとして木材の樹液抽出があります。木材から抽出される樹液には様々な効能のある成分が含まれており、棚橋教授はその成分を無駄なく抽出する「高圧水蒸気蒸留法」の開発に成功しました。
きつつき森の研究所では、高圧水蒸気処理による軟質針葉樹の圧縮成型加工や3次元深絞り加工、さらにはおがくずや枝葉などの未利用木質資源からの樹液抽出などの事業化を進めています。山に眠る多くの森林資源を余すことなく使いきり、健全な山林の復活を促し、本当の豊かな暮らしを取り戻す活動を行っています。

きつつき森の研究所
杉をつかうということ

日本は国土の67%が森林であるにもかかわらず、木材の自給率はわずか34.8%にとどまり、年間およそ11,041億円もの 木材を輸入しています(2016年度実績・財務省「貿易統計」より)。 森林資源が大量放置されているにもかかわらず、活用を図れない環境にこそ今日的な日本の森林問題があります。 いま荒廃してゆく国土を保全することは、近未来への火急な命題ではないでしょうか。

杉をつかうということ

日本に杉の植林地が多い背景には戦後の農林省の政策があります。第二次大戦によって荒廃した森林に、育成が早くて楽な杉を大量に植林していきました。1957年には国有林生産力増強計画を企て、建用材として天然林を伐採し杉を中心とした樹種転換を図ってきました。これにより高度経済成長時代は、国有林等から生み出される木材がその成長を下支えしてきました。ところが、円高による外国材の輸入増加や建築工法の変化は国産材の価格低迷を招き、林業がもはや産業として成り立たなくなり、森林の育成は後回しとなって山は荒廃してゆくという悪循環に陥ってしまったのです。
こうした末に現在、以下のような問題があります。

・森林荒廃による土石流の発生や河川の荒廃、更に海岸部への土壌流出による漁業への被害増大
・杉花粉等による人体の健康に対する悪影響
・林業家の後継者不足による更なる山の荒廃
・価格の安い発展途上国での伐採による地球環境への影響
・森林の本来もつ生態系への影響

そこで、きつつき森の研究所では森林を循環させ豊かな森林環境を取り戻すために、杉を家具に積極的に使っていくことに挑戦しています。

圧縮技術について

杉はとても軽く温かみがあり、木目が真っ直ぐで美しいなど様々な特長がありますが、軟らかい点は強度が必要な家具用材としては短所でした。私たちはこの軟らかいというデメリットを、加熱圧縮によって克服する技術を開発しました。その基本は100年に渡る「曲木」技術のノウハウにあります。高含水率・高温状態(蒸煮)で木材組織を軟化させ造形する曲木技術をもとに、杉などの軟らかい木材の強度・加工性能・意匠性の向上を目指した圧縮の技術開発に取り組んできました。

圧縮技術について

このプレス圧縮において使用する成型金型を活かすことで、丸型・波型など平面に限らず目的の形状に圧縮成型することが可能となります。さらに圧縮成型の利点として、切削屑を生じないこと、緻密な木材表面が得られることなどがあります。また、現在圧縮材の品質向上はもとより、化粧圧縮や“曲がる木材”による3次元加工の研究を進めています。

  • 技術の研鑽と発展 圧縮
  • 技術の研鑽と発展 圧縮
    「曲木」技術のノウハウを活かして開発された「圧縮」技術。その概要と詳しい圧縮工程、技術開発についてご覧いただけます。

樹液抽出について

木材圧縮技術を活かした高圧水蒸気蒸留法で樹液を抽出しています。高圧水蒸気蒸留法では通常の水蒸気蒸留法では得ることのできない貴重な成分を抽出することができます。これらを私たちの生活に役立てることができないだろうかと、きつつき森の研究所において樹液抽出の研究を進め、現在はエッセンシャルオイルなどのアロマ製品、植物や土壌の状態を整えるバイオスティミュラント資材「杉山水」として製品化しています。家具には使えない木材や、山を守るために枝打ちされた枝葉など、永年かけて育った森の恵みを余すところなく、みなさまへお届けしていきたいと考えています。

高圧水蒸気蒸留法

樹液抽出について
飛騨産業SDGs宣言

飛騨産業では「SDGs」を『志』を実現するための重要な柱と位置づけ、17の目標の中から4つの重要項目を選び、「4つの価値観」に基づく企業活動を通じて、100年後の子供たちに夢のある地域とすばらしい環境を残したいと考えています。

  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 12 つくる責任 つかう責任

    私たちは、飛騨地域に豊富にあったブナを活用すべく、家具メーカーとして創業した先人の想いを胸に、家具に使用されず廃棄されてきた節材や枝の利用、杉を研究して圧縮し、木部や枝葉からは樹液を抽出するなど、限りある資源を余すことなく活かす取り組みを行っています。

  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう

    原木から家具になる部分はおよそ3分の1です。それ以外の部分はチップ燃料に加工されたり、枝打ちした枝葉は森林に放置されたりなどされています。飛騨産業では研究所を構え、そこから生まれた商品を販売拡大していくことで、未利用材の利用促進に繋げていきます。