2年前、それぞれのプロジェクトの夢に差し迫る死について語った講演後のことでした…飛騨産業社長の岡田さんが、日本の豊かな森林の中にある、彼の工場で生産される木製家具のためのプロジェクトを依頼してきたのです。
その森林には杉の木が密生しています…100万の1万倍もの…。絶滅の危機にある他の品種のために、これらの木々を間伐する必要がありました。しかし、糸杉の一種である杉の木は、極度に柔らかく、また節が多いので、家具にはあまり適していないのです。岡田さんは大学と協力し、杉に必要な硬さを与えるプレス技術を開発しました。また、節については、望むことも…思うことも私と同じで、木の節は美しく、尊重されて然るべきと考えていました(私は彼を抱きしめたい衝動に駆られました。50年も仕事をしていますが、やっと、翌朝までに仕上げなくてもよいプロジェクトを依頼する人物にめぐり合えたのです)。
工場では有能な200名もの職人が働いています。もはや大都市では失われてしまった偉大な日本文化の魂が、今なお彼らの心の中に深く染み透っています。最新テクノロジーを備えながらも、ムクの木はいまだに主に手作業で加工されています。中国はすぐそこ…。造形的・社会的なクオリティーを失うことなく(可能な限り)生産コストを下げるのは、生命線の維持に繋がります。今日、このように人間を大切にするエコロジーは、森林エコロジーに劣らず重要だと私は考えます。
職人の技量は、その時代に必要な工具・方法・技術を考案し…実現する…能力の上に築かれています。今は死に絶えた、過去の技術や儀式から生まれた昔のフォルムを、飽くことなく複製することが職人の腕の良さ…と考える人については何と言ったらいいのでしょう…。ここに、幾千もの可能性の中から、二つの工具と柄杓を紹介します。それといっしょに、飛騨の職人が木をプレス加工するために作った型も…。
先に古い日本の魂について述べましたが、次のような典型的なイメージは、それを充分に物語ってくれるでしょう。桂離宮の内部…クオリティーは決して民俗的なものではありません。こうした建築が近代ムーブメントに大きな影響を与えてきたことは誰もが知るところです。
魂を取りもどすには、スタート地点に立ち戻らなければなりません。この私の見解を日本語の音綴帳の何ページかを使って説明したいと思います…もちろん、ヨーロッパにも音綴帳はあるのですが…。